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雨水対策だけではない、未来に期待される「グリーンインフラ」の使命とは?(後編)

未来都市編集部225 views

東京都市大学では「未来都市研究の都市大」をコンセプトに掲げ、各領域で都市研究を重ねてきました。本記事では未来都市研究機構のユニットの1つ「グリーンインフラ研究ユニット」のこれまでの取り組みや今後の展望について紹介します。今回は環境学部の飯島健太郎教授にお話をうかがいます。

前編の記事はこちらです。

近年では気象災害や気候変動が私たちの生活へ大きな影響をもたらしています。これに対して、緑や土地利用から課題を解決し、豊かな未来社会を作っていく方策が「グリーンインフラ」となります。

飯島健太郎教授

「防災減災」「環境改善」「健康ストレスマネジメント」をテーマに研究

私たちのユニットではグリーンインフラを広義に捉え、「防災減災」「環境改善」「健康ストレスマネジメント」という3つのテーマに基づいて体系的に研究を進めています。グリーンインフラユニットは、私と横田准教授、丹羽准教授の3人で取り組んでおりますが、それぞれの専門分野が異なるため、意見交換をしながら上手く科学反応を起こせるように研究を進めているという状況です。今年は以下4つのような取り組みを実施しました。

1つ目は、グリーンインフラを環境調整機能と捉えるだけでなく地域コミュニティの拠点としての可能性を探るべくニュータウンの緑地が地域住民にどのように利用されているのかを把握するアンケート調査の実施です。緑地維持のためにどれくらい費用を負担しても良いかということも問いました。

2つ目は、営造物としての緑地配置から、そのコンテンツの工夫から公益性を高める議論が重要であり、公園緑地で開催されたイベントでの利用者アンケートの実施を行いました。緑地を訪れイベント参加による満足度などを調査するものです。さらに緑地利用によって地域経済波及効果についても探っています。

3つ目は、都市部に緑地を設けるために、どのような方法が最善かという技術的な研究です。屋上緑地に直接樹木を植えることは極めて難しいですが、芝生のように薄い土壌でも生育できる緑化手法であれば汎用性も高くなります。実際に小さな芝生ユニットを製作して模擬降雨の保水、流出遅延効果を実測した上で平屋根の工場や事業所の屋上を緑化した場合の雨水貯留量についても試算しました。緑化されることで相当な面積が期待できる場所の1つが鉄道の線路です。都電荒川線の荒川車庫付近の軌道緑化実験では、従前の砂利のみの状態と比較してどれだけ輻射熱が下がるのかという調査も行いました。

4つ目は、タワーマンション住民の観葉植物利用状況を調べるアンケート調査です。居住者のライフスタイルと共に、どれくらいの住民が観葉植物を利用しているのかということを調べました。また観葉植物を飾る場所や、その癒し効果、リモートワーク中の観葉植物の設置状況などについても問いました。結果から観葉植物は癒し目的よりも、ペットプランツとして飾る人が多いことがわかりました。生活空間における鉢物の果たす役割は、バイオフィーリア(本来、人は自然や動植物との結びつきを好む傾向がある)という観点からも重視されつつあります。

社会課題をグリーンインフラで解決していく

よりバーチャル化に向かうデジタル社会、デジタルトランスフォーメーション時代を踏まえた街づくりにおいては、土地利用の活用法が大きなカギとなってきます。AIやICT技術によってさまざまなモノが仕事をこなし、合理性や安全性を追求して動く社会ではありますが、生物としての人間が持つ感覚を失うことなく、リアルな知覚環境や体験から健康を担保する生活環境、ライフスタイルのデザインをあらためて構築していくことが必要であり、防災・現在から環境調節を含む多機能性とともにウェルネスや地域コミュニティの有効性に立脚した拠点と手段としてのグリーンインフラを体系的にデザインすることが求められるのです。

ビシャンパーク・洪水対策(シンガポール)

ビシャンパーク・洪水対策(シンガポール)

ウェルネスな活動の場にも(シンガポール)

ウェルネスな活動の場にも(シンガポール)

研究成果を活用して、土地利用に独自性の高い複合アイディアを

飯島健太郎教授

グリーンインフラ研究ユニットでは研究成果を土地利用に落とし込むことが目的の1つなので、企業や自治体のプロジェクトにおける良き相談相手になれればという想いがあります。官民連携の取り組みとして、国や自治体が所有する施設を民間活力を投入してが運営していくための法的整備も進んでいますが、近年ではより独自性の高い複合アイディアが不可欠となっています。そんな時に「ちょっと東京都市大学さんに聞いてみよう」と相談しに来てもらえるような存在になりたいですね。このような思いで、日々グリーンインフラの体系と社会実装に向けた構想について、研究を通じてアップデートしております。

飯島 健太郎(イイジマ ケンタロウ)

所属:総合研究所 環境学部
職名:教授
出身大学院:東京農業大学 修士 (農学研究科) 1994年 修了、東京農業大学 博士 (農学研究科) 1997年 修了
出身学校:東京農業大学 (農学部) 1992年 卒業
取得学位:博士(農学) 東京農業大学 1997年
研究分野:環境緑地学、造園学、公衆衛生学

ライター:未来都市編集部

東京都市大学 総合研究所 未来都市編集部です。未来の都市やまちづくりに興味・関心を持つ方に向けて、鋭意取材中!