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モビリティ、人流シミュレーション、感染リスク評価…社会実装を見据えた中間領域研究(後編)

未来都市編集部58 views

東京都市大学では“未来都市研究の都市大”をコンセプトに掲げ、各領域で都市研究を重ねてきました。2020年度から2021年度まで研究分野として「データドリブン・デザイン研究ユニット」が発足。本記事では、研究メンバーである理工学部 関口和真准教授と永野秀明准教授、ユニット長の高柳英明教授にこれまでの研究成果と今後の展望についてお話を伺いました。

関口和真准教授・永野秀明准教授・高柳英明教授

(左)関口和真准教授 (中)永野秀明准教授 (右)高柳英明教授

人流シミュレーションを用いた電動車イスの時間軸制御<関口和真 理工学部 准教授>

私は制御工学を専門としており、主に人の流れのシミュレーションや、その検証・解析という研究を行っています。ユニットの中では最もミクロな人間の流れを扱っているかもしれません。

研究対象の一つが電動車イスの自律走行です。電動車イスは車以上に人に近い場所で動くため、人が本来どのような動きをするのかを予測しなければ、安全に走行することができません。重要となるのが人間の動きのモデル化です。それにはシミュレーターを用いて、例えば通路の中で人と人がぶつからない動きなどを見ていきます。

関口和真准教授

とはいえ、シミュレーションで人の流れを模擬するというのは実は誰でも簡単にできること。極端な話、“言った者勝ち”です。そして、リアルな現象と対応づけるために必要となるのが、実際の人の動きを観察したデータとなります。ここではカメラベースで解析した人の流れのデータを使い、シミュレーションの有効性の検証が要となるのです。群集流動シミュレーションが専門の高柳先生のご協力もあり、シミュレーションで人間として違和感のない多彩な動きが模擬できたのも大きな成果だと実感しています。一方で、人の流れのモデル化だけでは物足りないところがあるので、今後はシミュレーションの中で動く柱をあえて設定し、その柱の存在によって生じる制御作用も検証していきたいと考えます。さらに、その制御作用がもたらすアクティブ構造など、制御というキーワードを幅広く応用させた研究を進めていくことが今後の課題です。

行動シミュレーションによる感染確率の分析<永野秀明 理工学部 准教授>

私は建築環境工学のなかでも特に室内空気環境を専門としています。これはたとえば、室内を換気するために必要な換気量の計算や、排気口の適切な設置位置を考える分野です。

依然として続くコロナウイルスの感染拡大により、一人の感染者の移動による感染リスクの分析は都市スケールでは行われてきたものの、建物の室内スケールでの研究は飛沫の拡散に着目した検証が多く、人の移動に伴う感染に関する検証例は多くありません。そこで、建物内での感染リスクを分析するため、病院を対象としたシミュレーションを行いました。一般的に外来病院では患者さんは受付から待合室、診察室、会計と移動します。他にも多くの患者さんがいる中で、移動する先々で咳をした場合、どのくらいの感染リスクがあるのかを検証するべく、人の流れをシミュレートしました。

永野秀明准教授

たとえば、手にウイルスがついた状態でドアノブを触ったとして、その後でそのドアノブに触れた何人が感染するかを明らかにするのは非常に難しいのです。そこで我々は、ビフィズス菌を塗った手の平をテーブルにつけて、そこからどのくらい菌が検出されるのかという実験も行いました。その実験結果と合わせて、建物内での人の動きを細かく再現したことで、感染確率を定量的に分析できたのは非常に有意義です。これらの結果を踏まえて、間接接触による感染をシミュレートしていきたいと思います。

近年では感染防止のため、待合室の椅子に間隔が設けられていたり、バスの運転手の後部席が使用禁止となっていますが、実はそれは逆効果かもしれないという説がシミュレーションによって示唆され始めています。ならばどういう場所で感染リスクが高く、あるいは低いのか、さらにリスクを下げるために何をすべきかという研究についても今後注力したいところです。

2年間の振り返りと今後の課題<ユニット長 高柳英明 都市生活学部教授>

データドリブンデザイン・ユニットは、人を無理やり集めたというよりも、なんとなく人が集まってきたという印象です。これは例え話ですが、渋谷のような「谷」は昔から人が集まる場所とされますが、このユニットはまさにそんな谷のようなもの。それぞれの研究分野は別々だったものの、マクロとミクロの間の“中間領域”が今の社会に足りないという問題意識を持つ先生が自然と集まったという雰囲気です。各自の論文数も多いですし、行う研究も目覚ましいものがある。気鋭の若手研究者であると誇りに思っています。

高柳英明教授

社会と人間の中間領域の研究が今まであまり行われていないことが、このユニットの活動を通じて明らかとなりました。相談に来られる外部の企業さまの中にも、この中間領域が分からないと悩まれる方が非常に多い。その問題をユニットの研究の中で集約できたので、それぞれを個別化して、主体的に世の中に発信していくことが今後の展望ですね。

関口 和真(セキグチ カズマ)

所属:理工学部 機械システム工学科
職名:准教授
出身大学院:東京工業大学理工学研究科機械制御システム専攻博士 2010年 修了
取得学位:博士(工学)東京工業大学 2010年
研究分野:情報通信:機械力学、メカトロニクス・ものづくり技術(機械・電気電子・化学工学):制御、システム工学

永野 秀明(ナガノ ヒデアキ)

所属:理工学部 機械システム工学科
職名:准教授
出身大学院:東京大学工学系研究科建築学専攻博士 2011年 修了
取得学位:博士(工学)東京大学 2011年
研究分野:ものづくり技術(機械・電気電子・化学工学):熱工学

高柳 英明(タカヤナギ ヒデアキ)

所属:都市生活学部 都市生活学科
職名:教授
出身大学院:早稲田大学 博士 (理工学研究科) 2003年 修了、早稲田大学 修士 (理工学研究科) 1998年 修了
取得学位:博士(工学)早稲田大学 2003年
研究分野:建築デザイン・インテリアデザイン・建築計画・人間工学

ライター:未来都市編集部

東京都市大学 総合研究所 未来都市編集部です。未来の都市やまちづくりに興味・関心を持つ方に向けて、鋭意取材中!