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キーポイントは「固定」から「可変」。未来にふさわしい在宅ワーク環境とは?(後編)

未来都市編集部2,407 views

「ヒューマン・センタード・デザイン研究ユニット」では、新型コロナウイルスの様なパンデミックや働き方改革を視野に入れ、未来における最適な在宅ワーク環境を研究目標としています。気候や環境、ウィルスの対策、災害リスク、心理的要因などを総合的に勘案して、SDGs にも資する在宅ワーク環境提案などさまざまな活動を進めてきました。

本記事では未来都市研究機構のユニットの一つ「ヒューマン・センタード・デザイン研究ユニット」の今後の展望について紹介します。お話しいただくのは、ユニット長の西山敏樹准教授です。

前編はこちらからご覧ください。

モノやサービスとして技術を実装し、生活者の近いところで研究成果をアピールしていく

未来の家は生活だけでなく、仕事も行えるという2つの機能がある場所と考えなくてはならない時代です。生活者も在宅ワークに適した環境を以前から求めていたものの、突然コロナ禍になってしまったことでスムーズに対応できていないのが現状と言えます。

カプセル型オフィスのイメージ

2050年くらいにはインプットとアウトプットが完全デジタルになりカプセル型オフィスも現実になるであろう

来年度の課題の一つとして、ハウスメーカーやデザイン会社とタッグを組んで「都市大×〇〇〇」という形で、モノやサービスとして世に出していくという計画があります。目下では、某ハウスメーカーと一緒に我々のアイディアや技術を実装させた家を作るプロジェクトを進めています。モデルハウスにカプセルオフィスやワーケーション向けトレーラーハウスを付けて、お客さんに評価してもらうというものです。その結果から少しずつリバイズしてくのもポイントになりますね。定量的に行うのであれば、動画を作ってVRでお客さんに体験していただき、気持ちや集中力の変化も調査していきたいなと。このように家やモノ、サービスという販売の推進に注力したいところです。

未来都市研究機構の活動目的は“未来都市研究の都市大”を浸透させることであり、KPIはあくまでも都市生活の質の向上です。大学の先生がこんなことを言うのもなんですが、これらの目的達成として、論文だけで評価されてはダメだと思っています。正直、普通の市民は論文なんて誰も読まない。多くの人たちに我々の活動を知ってもらうためにはメディアに出すなど、実際に製品として販売するしかない。もちろん論文を書くのも大事ですけれど、我々のユニットはそれだけを狙うのではなく、本やメディアを通したコミュニケーションや製品の販売という、生活者の近いところでのアピールも視野に入れてきたいと考えます。

西山敏樹准教授

また我々のアイディアや技術を世に問うていくため、2021年3月に「ニューノーマル時代の新しい住まい」という本を出版しました。人間の行動特性や心理を踏まえた間仕切や空間などについてユニットの先生達と書きました。実はこの分野の本はまだ出版されていないので、世の中の反応が楽しみです。“未来都市研究の都市大”を多くの人に知ってもらうきっかけになればと。

「固定」から「可変」、身軽で柔軟な暮らしがこれからのスタンダードに

前半でお話しした通り、城崎温泉や飛騨高山のエコハウスは自然と共生しながら仕事ができ、ワーケーションに最適であることがこのコロナ禍で判明しました。確かにオフィスでずっと上司に監視されているよりも、快適な環境の方が仕事は格段とはかどりますよね。このように働き方を可変的なものと捉えることが、パフォーマンスの向上にも深くつながるのではと考えます。カギは「固定」から「可変」というわけです。

大学での授業も対面式だけでなく、オンラインをもっと活用しても良いと思っています。学生との直接的なコミュニケーションは大切ですが、時には学生だって疲れてしまう。対面式かZoomか、学生がどちらかを選べるようにするのも一つの手なのかもしれません。たとえば課外活動を行う時はその場でZoom授業を受けることができれば、活動にも打ち込めやすい。時間の使い方もずっと有意義になります。それゆえ「可変」が一つの有効的な考え方なのではと思うのです。ちなみに先日私は、家内が運転する車の後部座席でオンライン会議に出席しましたが、全然問題なくできましたよ。

自動運転技術と動くオフィスの融合

自動運転技術と動くオフィスが融合すれば,新たなワークタイムを演出できる

最近の若い人は車を持たないこと知られていますが、その代わりにカーシェアリングを上手に活用しています。必要な時に車を借りてその都度料金を支払うことで、駐車場代や税金という固定費は発生しないし、車検の面倒な手間も省けます。極端に言えば、近年では所有することへの執着が薄れ、モノを持つ意味が変わり始めているとも言えます。つまり「可変」や「柔軟」を優先する傾向にあるのです。このような価値観を持つ若い世代が今後の社会を担っていくのですから、その層に着目していくことも重要と考えています。

コロナ禍で世界は大変な状況にありますが、多くの人の意識が変わったのですから、この時期をチャンスにすべきです。ニューノーマルというスタイルを受け止めて、前向きな姿勢で立ち向かうことが何よりも大事。そうしなければ都市生活はいつまで経っても快適になりません。コロナをチャンスと捉えて、未来と向き合うことがよほど建設的と言えるでしょう。

西山敏樹准教授

西山 敏樹(ニシヤマ トシキ)

所属:都市生活学部 都市生活学科
職名:准教授
出身大学院:慶應義塾大学 修士 (政策・メディア研究科) 2000年 修了 慶應義塾大学 博士 (政策・メディア研究科) 2003年 修了
出身学校:慶應義塾大学 (総合政策学部) 1998年 卒業
取得学位:博士(政策・メディア) 慶應義塾大学 2003 年
研究分野:社会システム工学・安全システム
研究分野/キーワード:ユニバーサルデザイン、福祉のまちづくり、都市交通、モビリティ論、社会調査法

ライター:未来都市編集部

東京都市大学 総合研究所 未来都市編集部です。未来の都市やまちづくりに興味・関心を持つ方に向けて、鋭意取材中!