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第184回総研セミナーレポート(1) 基調講演「廃校を活用した地域コミュニティ形成と実践」

未来都市 編集部2,137 views

未来都市研究機構主催の総研セミナーが10月29日(金)に開催されました。テーマは「空地の利用と未来のコミュニティ生成」です。

都市の中には、人口減少などの理由で空いた土地が増え続けています。一方で、その空地を有効活用し、コミュニティ形成につなげる活動も目立っています。今回のセミナーでは、そんな空地・空間を活用した今後のコミュニティ生成について、各専門家からそれぞれの観点で語られました。基調講演には一般社団法人 オンラア未来会議 代表理事 柳堀裕太氏が登壇。廃校を活用した地域コミュニティ形成と実践についてお話しいただきました。

柳堀裕太

オンラア未来会議について

まずは簡単な自己紹介をさせてください。私は3年前に社会情報大学院大学の広報・情報学修士号第一号を取得し、現在はテレビCMのプロデューサーを本業としております。

「オンラア未来会議」は2020年に千葉県香取郡東庄町出身者を中心としたメンバーで発足し、廃校となった旧石出小学校を活用し、知るための施設「トゥーノーイシデショウ」を運営しています。“無価値の価値化”をコンセプトとし、地域において無価値だと思われているものを見直し、新たな価値を掘り起こすことが活動の中心です。営利が目的の活動ではなく、“地元の未来は自分たちで良くしていこう”というようなスタンスです。

オンラア未来会議の理事

オンラア未来会議の理事メンバー

千葉県東庄町とは

続いて、東庄町について説明します。東庄町は千葉県の東端、茨城県との県境にある小さな町です。現在の人口は約13,000人ですが、40年後には3分の1になると予想されます。

我々の拠点は東庄町ですが、東関東全体をターゲットのフィールドとしています。東関東を見ると、歴史、地理、農林水産物、アクティビティという4象限で捉えることができます。東京の大生産地という場所柄、日本一の売り上げを誇る農業法人や億越えの農家が数多くあります。また、11年連続漁獲高日本一の銚子市、バスフィッシングの聖地である霞ヶ浦、サイクリングで人気の利根川、鹿島神宮や香取神宮という由緒正しい神宮も有し、アクティビティや観光要素も豊富です。成田空港や東京からのアクセスも良く、東関東という地域は今後の可能性が大きいのではないかと考えます。

具体的な活動と推進中のプロジェクト

定例的な活動としては、毎週土曜日開催のオンラア未来会議、日曜日開催のオンラア運営会議があります。これには全メンバーの参加が基本です。さらに、定期的にイベントも開催しており、地域の飲食店を応援するドライブスルー形式のPRイベント、農業体験、ビジネスコンテストなどを実施しています。ドライブスルーは来場者数1,500人を超え、完売御礼の店舗も続出するなどメディアにも取り上げられました。

東庄町名産の子カブ収穫体験

東庄町名産の子カブ収穫体験

メンバー個々の活動も盛んで、家庭科室を使った縁食活動、保健室での介護美容、校庭でのヨガ教室なども行われ、新たなコミュニティが生まれています。

現在進行中の大きなプロジェクトとして「テレワーク推進事業」があります。これは国から交付金をいただき、校舎3階をコワーキングルームにするというものです。地方では“仕事ができる空間がない”という問題が度々起こりますが、そんな不安を払拭させるような仕事環境をつくろうということで進めています。来年4月から運営をスタートする予定です。

コワーキングスペース ハタラキバの完成イメージ

コワーキングスペース ハタラキバの完成イメージ

また、空き家を資源に変えるための活動も行っています。東庄町近辺には3,000軒を超える潜在的空き家がありますが、売買を行う不動産屋がないため長年放置されていました。そこで、自分たちで不動産屋を立ち上げ管理することを目指しています。今年4月から稼働した長期滞在向け物件は、ほぼ毎週末利用されています。先日はとある大きな空き家を無料で大家さんからいただきました。自分たちでDIYし、大学生が泊まり込みで合宿するような場所になればいいと考えています。

柳堀裕太氏 講演のスライド

さらに、毎月第2日曜日には校庭を活用したフリーマーケットを開催しています。地域の色々な食材を販売するほか、ミニライブなども実施しており、仕事と生活以外の時間を楽しんでもらうことが目的です。

また、有名ドローンチームと連携し、「トゥーノーイシデショウ」を活用した人材育成活動、校庭に最新型サウナユニットを設置したサウナ体験も予定しています。行政との連携による空き家解消に向けたチームづくりや移住推進など、町の予算をいただいて進めるプロジェクトも今後展開していく次第です。

ここまでお話させていただいたコミュニティ形成は、大学院での卒論「地域ブランドコンセプトの共創モデル」がベースとなっており、実証実験を行っているかたちです。運営側が考えるストーリーと、そのストーリーで動いてもらった地域参加者のストーリーが、地域ブランドを生むというモデルを実証するというものです。

柳堀裕太

コミュニティ形成のために必要なこととは

コミュニティ形成で第一としているのは、「対話」「実践」「検証」です。会議で浮き彫りになった課題は速やかに実践し、その週のうちに検証するように徹底しています。速やかに課題を1つずつ解決していくことで、デメリット的要素が解消し、居心地の良い場所となるのです。これらの積み重ねが理想的なコミュニティ形成につながるのではないでしょうか。

オンラア未来会議メンバーによる地域の魅力マッピングワークショップ

オンラア未来会議メンバーによる地域の魅力マッピングワークショップ

また、メンバー1人ひとりが“メディア”であると意識しているのも特徴です。運営側の意図が人を介して伝わりやすいようなツールを用意し、媒介するような仕組みです。未来の子供たちが主役となるストーリーをメンバーがしっかりイメージし、共通の課題を持つことで、それぞれの活動の価値が高まると考えております。

柳堀 裕太(ヤナギホリ ユウタ)

一般社団法人 オンラア未来会議 代表理事

ライター:未来都市 編集部

東京都市大学 総合研究所 未来都市編集部です。未来の都市やまちづくりに興味・関心を持つ方に向けて、鋭意取材中!