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高山市の『あたかも大学』の取り組みと都市大との連携

未来都市編集部421 views

東京都市大学都市生活学部、大学院環境情報学研究科准教授の西山敏樹氏は、「高山市の『あたかも大学』の取り組みと都市大との連携」をテーマに、飛騨高山大学連携センター設立の背景やその機能について報告した。

西山敏樹准教授

飛騨高山大学連携センター設立の背景

「飛騨高山大学連携センター(以下センター)」は、岐阜県高山市が2017年6月に設立した一般財団法人である。センターの目的は、大学との連携推進を柱のひとつに掲げ、全国にある大学とのつながりを強化し、将来的な地域人材の育成と確保を図ることにある。

設立の背景にあるのは若者の人口減少だ。高山市は、都市部にある大学等への進学により若者の人口流出が進み、20歳前後の若者層が極端に少ない人口構造にある。流出を防ぐために大学誘致も検討したが、現実的には難しいと判断。センターを設立することで、全国の大学との連携を深める方向にシフトチェンジした。政令指定都市や中核市以外の地方都市において、独立型の自治体シンクタンクを設立したのは高山市が初めてだ。

西山敏樹准教授

現在センターには、高山市と連携する7大学(岐阜大学や愛知大学など)、センターと連携する東京都市大学都市生活学部、およびセンターが誘致する多くの大学が参加している。市内に大学がなくても、高山をフィールドに様々な分野で調査・研究・提言する大学が一堂に集合することで、“あたかも”大学であるかのように「飛騨高山総合大学」を形成できているのがポイントだ。

センターは、高山市における調査研究活動やゼミ合宿などの大学活動を積極的に誘致している。たくさんの大学生や院生などが高山で活動し、高山を詳しく知ることで、高山に興味を抱き、高山のファンになるだろう。将来的には、飛騨高山へのI・Jターン(若手人材、専門知識を有する人材の確保)につなげることも、センターのミッションのひとつに掲げられている。

飛騨高山大学連携センターの機能

センターの機能は、「自治体シンクタンク(研究機関)」と「大学コミッション(大学活動誘致機関)」の2つある。

「自治体シンクタンク(研究機関)」機能に求められているのは、大学が保有する高度で専門的な知見と連携して、高山市の抱える問題・課題の解消、地方創出を担う人材の育成・確保などを推進することにある。
主な活動内容は、高山市の各種統計データや様々な意向調査結果などの情報収集・分析や、行政・まちづくり協議会・民間団体などでは対応が難しい課題・計画・事業化などに対し、大学の知見を活用して対応することなどだ。
センターは「まち・ひと・しごと」を調査・研究の3つの柱として掲げている。これに基づき、まち、ひと、しごと、これら3つを包括した事業に関する研究が大学ごとに進められている。東京都市大学においては、平成29年度に「ひと」の分野を担当し、「誇りと愛着の高山学」をテーマに「高山市中心部および飛騨の里をモデルとしたユニバーサルデザインに関する調査研究」を行っている。

西山敏樹准教授

もうひとつの機能である「大学コミッション(大学活動誘致機関)」に求められているのは、ゼミ合宿、フィールド調査、各種研究などの大学活動を誘致し、「多くの大学や大学生が活動する飛騨高山」を確立することにある。
主な活動内容は、「高山市において大学が行う調査・研究や創作活動、ゼミ合宿、インターンシップなどの誘致」のほか、「実際の活動に対する支援や、宿泊施設、企業、市民団体などの情報提供を行うワンストップ窓口の業務」、「サテライトキャンパスのあっせん・紹介」などだ。平成29年度実績では、センターを通じて32大学、約1,000名の教員および大学生を受け入れた。多くの大学が高山市で「市民との交流」「調査結果の発表・提案の場(機会)」「地域産業の現場視察」などを希望しており、今後も継続して訪れたいといった声も多く上がっている。

このように、センターが「高山市」、「連携大学」、「金融機関」、「企業団体・NPO・市民団体」などと連携して課題解決に取り組み、ときには各方面に橋渡しを行うことで、高山市のまちづくりを盛り立てているのだ。

東京都市大学都市生活学部と高山市との連携事業の実際

東京都市大学の実績として、高山市との連携事業の事例をひとつ紹介する。
東京都市大学都市生活学部は今年、高山市から「市の景観に関して、外部の若者の視点・意見を活かしたい」と依頼を受け、「誰にもやさしいまちづくり調査業務」を行っている。高山市は年間450万人超の観光客が訪れる国内有数の観光地だが、移動や観光を阻害する要因が多数見受けられる。そこで「住みよい街=行き良い街」と位置づけ、「誰もが移動しやすく過ごしやすい高山」の創造を目的に調査を実施した。

飛騨高山大学連携センターとの協働による高山国府地域の調査の一コマ

飛騨高山大学連携センターとの協働による高山国府地域の調査の一コマ

調査活動の内容は、地元住民・日本人・外国人観光客へのヒアリングや季節ごとのフィールドワーク、高校生へのキャリア学習プログラム「カタリ場」の設置などだ。最後には市議会議員・市職員・市民への公開報告も行い、高山市側にまちづくりに役立つ生の声やデータを示すことができた。大学生にとっては、マーケティングリサーチ演習の実践やプレゼンテーションの練習にもなり、良い機会となったのは明白だ。このほかにも、様々な形で調査研究が進められている。

今後高山でフィールドワークを行う学生がディスカッションや調査のまとめに空き家を活用する方向

今後高山でフィールドワークを行う学生がディスカッションや調査のまとめに空き家を活用する方向

センターの存在は、高山市にとっても東京都市大学にとってもメリットが大きい。
高山市側からすると、都市問題解決への研究力や市民の教養を高める力、若者へのまちを訴求する力などが得られる。大学側からすると、研究テーマが豊富な高山は実践的都市研究の場として魅力的であり、また市と連携を深めることで「都市研究の都市大」のブランド力向上につなげられる。このように双方のニーズが一致して良い関係を構築できている。

高山名物の古い町並みで調査する大学生

高山名物の古い町並みで調査する大学生

自治体シンクタンクの設立は、都市の活性化を促す存在になり得る。地域に大学をつくらなくても、センターを通じて各大学の持つリソースを使うことができれば、都市の魅力を高めることも可能だ。高山市では今まさに、センターを中心に様々な大学や企業などと連携して、「交響」のまちづくりが始まっている。

西山 敏樹(ニシヤマ トシキ)

所属:都市生活学部 都市生活学科
職名:准教授
出身大学院:慶應義塾大学 修士 (政策・メディア研究科) 2000年 修了、慶應義塾大学 博士 (政策・メディア研究科) 2003年 修了
出身学校:慶應義塾大学 (総合政策学部) 1998年 卒業
取得学位:博士(政策・メディア) 慶應義塾大学 2003 年
研究分野:社会システム工学、安全システム、ユニバーサルデザイン、福祉のまちづくり、都市交通、モビリティ論、社会調査法

ライター:未来都市編集部

東京都市大学 総合研究所 未来都市編集部です。未来の都市やまちづくりに興味・関心を持つ方に向けて、鋭意取材中!