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都市研究における重要なキーワードは「個」と「孤」

未来都市編集部184 views

東京都市大学では「都市研究の都市大」を掲げ、「生活」「健康」「情報」「環境」「インフラ」の5つの研究領域を有する「未来都市研究機構」を中心に、魅力ある成熟都市形成に貢献するエイジングシティ総合研究を推進しています。また本学の「都市研究の都市大:魅力ある未来都市創生に貢献するエイジングシティ研究および実用化の国際フロンティア」事業が、文部科学省の平成29年度私立大学研究ブランディング事業(タイプB:世界展開型)に選定され、これまで3年間にわたり、それぞれの領域において研究を重ねてきました。

本記事では、生活領域ユニット長である東京都市大学都市生活学部の西山敏樹准教授に、この3年間の研究成果と今後の展望について話を聞きました。
第1回の記事はこちらです。
第2回の記事はこちらです。

これからはMaaSから、総合的な都市サービス「CaaS」の時代に

自動車から排出される温室効果ガス、運転するのが難しい高齢者の移動といった問題を解決する方法として、世界中から注目を集めているのが「MaaS(マース:Mobility as a Service)」。バス、電車、タクシーからライドシェア、シェアサイクルといった公共交通機関を、ITによってつなげて効率よく利用する考え方です。

私も2018年に日本初の「郊外型MaaS実証実験」を行いました。これは、スマートフォンによる乗車予約システムを通じて利用できるオンデマンドバスをはじめ、ハイグレード通勤バス、パーソナルモビリティ、カーシェアの4つのモビリティを組み合わせたもので、「次世代郊外まちづくり」のモデル地区である田園都市線「たまプラーザ駅北側地区」を中心に実施しました。

西山 敏樹 准教授

買い物困難者という課題をMaaSによって解決するというアプローチは確かにありますが、それだけでは十分ではないと、この3年間の研究を通して感じています。今日は腰が痛いとか、高齢者の体調は日によって変わることも多いです。また天気が悪い日は出掛けるのが難しくなる。「元気な日はMaaSを使って出掛けたいけれど、そうでない日は買い物支援システムを利用したい」という声が多く聞かれました。

そこでMaaSと買い物支援システムの入り口を統合して、体調などによって利用者が選べるようにするというサービスを次の段階として考えています。この3年間の研究でそれぞれの基礎はできあがっていますので、あとは組み合わせるだけ。私は、このMaaSと買い物支援システムを統合した総合的な都市サービスを「CaaS(カース:City as a Service)」と名づけました。移動だけではなく、さまざまなものと組み合わせて、さらに都市サービスを向上させる段階にきていると考えています。

買い物支援システムの次の段階は、地域ビジネス化

この買い物支援システムの実証実験は、千葉県の八千代台のほかに、東京都の綾瀬、神奈川県の藤沢といった東京近郊で行ってきましたが、日本全国のあらゆる都市で必要とされるユニバーサルなシステムだと思います。

この3年ではできなかったのですが、今後は買い物支援システムを実社会で導入してもらうためのプロモーション活動をしていく予定です。地元の生産者や小売業、運送業などと組むことができれば、地域ビジネスになり、持続可能なまちづくりにつながるでしょう。社会的な大きな課題を解決できる取り組みですので、必ず実現させます。

「1万人都市生活者調査」から、浮き彫りとなった「個」と「孤」

この3年間の研究として、特に記憶に残っているのは2018年、北見幸一准教授をはじめ生活領域ユニットのメンバーで行った「1万人都市生活者調査」です。調査対象は全国男女18歳~69歳、9,842名を有効サンプルとしています。

「2020年以降に重要な社会問題になると思われることは?」という問いに対して最も多かった回答は、「介護する人も高齢者となる」(66.9%)でした。老老介護の問題については半数以上の方が危機感を強く認識していました。そのほか「孤独死の増加」(44.0%)、「団地の住民の高齢化」(41.3%)、「社会関係の希薄化」(28.4%)、「買い物難民」(20.6%)といった答えが多くみられ、非常に多くの人が「個」と「孤」に対して恐れを抱いていることがわかりました。「ひとりでいる自由さ、身軽さを楽しんでいるけれど、年をとるにつれ孤独が怖い」という価値観が浮き彫りになったのです。

今の都市部は、隣に誰が住んでいるかがわからない状況が普通です。相互扶助が成立していない。この「個」と「孤」をどうしていくのかというのは、これからの都市研究において重要なキーワードになってくると思います。

西山 敏樹 准教授

都市生活の研究というと「にぎわいを持たせるにはどうしたらいいのか」というところに考えが行きがちです。「人がたくさんやってきて、まちがにぎわう」というのはもちろん大事なことですが、多くが施設をつくったり、イベントを開催したりというところで話が止まってしまう。「人がにぎわいに入っていくために、移動をどのように支援するのか」というアクセシビリティにまで話がいかないのは大きな問題だと感じています。移動ができなくて家から出られないのに、施設をつくったり、イベントを開催したりしても本末転倒なわけです。これではいつまでたっても「個」や「孤」を解決できません。

これからも「住み続けられるまちづくり」に必要な「持続可能なシステム」を提供するため、ユニバーサルデザインやエコデザインといった考え方を軸に、研究をさらに深めていきたいと思います。

西山 敏樹(ニシヤマ トシキ)

所属:都市生活学部 都市生活学科
職名:准教授
出身大学院:慶應義塾大学 修士 (政策・メディア研究科) 2000年 修了 / 慶應義塾大学 博士 (政策・メディア研究科) 2003年 修了
出身学校:慶應義塾大学 (総合政策学部) 1998年 卒業
取得学位:博士(政策・メディア) 慶應義塾大学 2003 年
研究分野:社会システム工学・安全システム
研究分野/キーワード:ユニバーサルデザイン、福祉のまちづくり、都市交通、モビリティ論、社会調査法

ライター:未来都市編集部

東京都市大学 総合研究所 未来都市編集部です。未来の都市やまちづくりに興味・関心を持つ方に向けて、鋭意取材中!