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インクルーシブな社会を目指し、日常生活動作の支援機器を開発

未来都市編集部305 views

2018年11月17日、東京都市大学渋谷サテライトクラス(東京・渋谷区)にて、『渋谷福祉学会 第1回大会(第140回総研セミナー)』が開催された。

『渋谷福祉学会』は、子育ての現場および福祉に関わる諸問題を科学的に調査し、総合・包括的に研究することを目的とした東京都市大学総合研究所「子ども家庭福祉研究センター」と渋谷区が共同で開設し、運営を行っている。

『渋谷福祉学会 第1回大会』では、“渋谷の福祉の未来を創造する”をテーマに、渋谷区の老若男女や国籍、身体の状態にかかわらず、人が先端ロボット技術を用いた幅広い生活サービスを享受できる社会(=ユニバーサル未来社会)の実現を見据えた講演、シンポジウム(テーマ:渋谷のユニバーサル未来社会を考える)、渋谷区の福祉事業所による研究発表が行われた。

和多田雅哉 教授

当記事では当大会の前半に行われた2つの基調講演の中から、東京都市大学 工学部 医用工学科の和多田雅哉教授の講演「日常生活動作を支援する機器の開発(移動支援分野における開発事例)」をレポートする。

医学と工学を融合させて社会に貢献

東京都市大学 工学部 医用工学科は、医学と工学の境界領域を学ぶ学科で、医学と工学を融合させて社会に貢献することを目指している。学科内には4つの研究室があり、和多田教授が所属する臨床器械工学研究室では、機械および電子(電気)的な手段を取り入れた技術を構築。患者、高齢者、障がいを持つ人々へのサポートを目的とした研究が行われている。手術用ロボット、人工心臓などの医療技術、車いすや杖、歩行器などの生活支援機器とその研究領域は実に幅広い。

今回の講演では、これらの研究の中から「日常生活動作の支援機器の開発」に関して、現在進められている開発事例と合わせて紹介した。

和多田雅哉 教授

臨床器械工学研究室では、国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health,略してICF)に基づいて日常生活動作の支援機器開発を行っているという。国際生活機能分類とは2001年5月、世界保健機関(WHO)総会において採択されたもので、障がい、健康に関する分類で「健康状態」「心身機能・構造」「活動」「参加」「環境因子」「個人因子」の関係とその影響をまとめている。

健常者やそうでない人(高齢者や障害者)の区別なく、現在生活している人々の誰もが分け隔てなく、普通に移動したいときに移動できる、使いたいときに使うことができる環境をつくることで、これまで社会的不利な状況に置かれていた人々の個々の活動や社会参加を促すことができ、QOL(生活の質)の向上が望めると読み取ることができる。

片まひ患者をサポートする、片手で操作できる車いす

生活支援機器開発が求められる分野としては「介護分野」「リハビリ分野」「移動支援分野」「スポーツ分野」があり、これらの中から、今回は「移動支援分野」の開発事例について紹介があった。

まず紹介されたのは「片手こぎパワーアシスト車いす」。片麻痺の人の生活を支援するため、片手で操作できる車いすを開発している。車いすは、片側だけの操作だと操作している側とは反対の方向に回転してしまい直進することが難しいため、片麻痺の人は健常側の足を使用して軌道を修正している。また、片手で両手分の力をまかなわなければならず、負担が大きい。こうした課題に工学的にアプローチして開発されたのが「片手こぎパワーアシスト車いす」だ。自走式(手動)車いすに、モータによるアシスト機能を取り付けて、搭乗者の腕の負担を軽減、さらに、手元に設置されたジョイスティックで動く方向を決められるよう改良した。

「パワーアシストではなく、電動にすればいい」という意見もあったが、電動だと筋力の低下が起こるため、パワーアシストを選択した。これなら残存筋力の維持が図れ、リハビリ効果も期待できる。
実際に患者に対して走行試験を行い、操作性や乗り心地など評価したところ、「高齢者の中には操作に慣れるまで時間がかかる人もいる」などの課題が明らかになったという。

マルチパーパスモビリティ

続いて紹介されたのは「車いすと連結できるパーソナル電動モビリティ」。少子化による社会の高齢化により要介護者は増加し、介助者の負担もそれに伴い大きくなっている。また「老老介護」も大きな課題で、利用者のみならず介助者の負担も軽減する機器開発が急務だ。

「車いすと連結できるパーソナル電動モビリティ」は自走式車いすと簡単に連結できる仕組みで、介助者はパーソナル電動モビリティに乗って移動をするため、負担を大きく軽減できる。パーソナル電動モビリティは、歩行器のような「スタンディング」、シニアカーのように容易に乗車できる「ドライビング」、若者向けの「スケートボード」と、使用状況や目的に応じて形骸変化が可能となっている。

まとめ

「インクルーシブな社会を目指し、今後も、移動支援分野やリハビリ分野といった日常生活動作を支援する機器を開発していきたい」と語る和多田教授。国際生活機能分類にある「健常者やそうでない人の区別なく、誰もが分け隔てなく、普通に移動したいときに移動できる」未来は、もうすぐ手の届く場所にあるといえるかもしれない。

和多田 雅哉(ワタダ マサヤ)

所属:工学部 医用工学科
職名:教授
出身学校:武蔵工業大学(工学部) 1984年卒業
取得学位:博士(工学) 武蔵工業大学 1996年
研究分野:リハビリテーション科学・福祉工学、電力工学・電気機器工学

ライター:未来都市編集部

東京都市大学 総合研究所 未来都市編集部です。未来の都市やまちづくりに興味・関心を持つ方に向けて、鋭意取材中!