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熱環境の改善と汚染物質を吸収するファイトレメディエーション

未来都市編集部728 views

これまで行なわれてきたハードウェア主体のグレーインフラから、今後は緑地を中心としたグリーンインフラの活用が期待されています。東京都市大学では未来都市研究機構のグリーンインフラマネジメントユニットをはじめ、環境改善や減災・防災、健康増進など多岐にわたる視点で緑地空間の機能を明らかにし、その成果を都市環境に還元する具体的な方法について研究が進められています。

この度、環境領域が専門の7人の先生方が一堂に会し、現在進められている東京都市大学におけるグリーンインフラユニットマネジメント研究について、意見交換会を開催。その内容を4回に分けて掲載します。

第2回となる今回は、「環境改善」の観点から、それぞれの研究についてご紹介いただきました。

グリーンインフラユニット

東京都市大学:対談プロフェッショナル
<ファシリテーター>
飯島健太郎 教授(環境学部・総合研究所・グリーンインフラマネジメントユニット長)
<コメンテーター>
横田樹広 准教授(環境学部・総合研究所・グリーンインフラマネジメントユニット)
リジャルH.B. 教授(環境学部・グリーンインフラマネジメントユニット)
吉田真史 教授(知識工学部・グリーンインフラマネジメントユニット)
福田達哉 教授(知識工学部・グリーンインフラマネジメントユニット)
堀川朗彦 客員研究員(ランドスケープアーキテクト・総合研究所)
山﨑正代 客員研究員(ランドスケープアーキテクト・総合研究所)

自然を活用した熱環境の改善とファイトレメディエーション

飯島教授
続いて「環境改善」の観点に移りたいと思います。まずは堀川研究員から熱環境の改善ついての研究を紹介していただきます。

堀川研究員
横浜市環境科学研究所のデータによると、これまで東京都心部であったヒートアイランド現象が今や横浜市の郊外にも及んでいます。ヒートアイランドの大きな原因に、駐車場など蓄熱する人工面の増加が挙げられますが、これを冷却面に変えることはできないかと考え、総合研究所のほうで2011年から「ハイブリッド芝生」の研究をしています。実際に世界でスポーツターフとして使われているハイブリッド芝生は、手間のかかる天然芝に人工芝の利点を組みあわせたものです。我々は、人工芝を基盤として用途に合わせて天然芝を育成する薄層型の方式で都市大方式と名付けています。ハイブリッド芝生でも天然芝のように熱帯夜における冷却効果を期待することは出来ないか、暑熱環境緩和に着目し、調査の結果、同等の効果があることが明らかになりました。さらに、アスファルトの上部にそのまま被覆をしても蓄熱を解消するということがわかりました。

堀川朗彦

堀川研究員

公共空間を使って涼しく暮らすことができる

また飯島先生のご指導のもと、鉄道敷の緑化がどれだけヒートアイランドの改善に効能があるかという研究をしています。都電荒川線で実験を行なっていますが、超薄型のパネルに水やりなどの手間が通常より簡素化できる多肉植物を植え、景観性を高めながら暑熱環境緩和ができないかと調べましたら、通常の場合と比べ冷却期間が早く始まり、長く続くことがわかりました。先ほどのハイブリッド芝生とあわせて、もう少し応用化が進めば、大きな再開発がなくても公共空間を使って涼しく暮らすことができるのではないかと思っています。また都心部の展開は着目される場所での応用化ですので、市民に対しての認知度が高くなるのではと考えています。

鉄道敷の緑化について 鉄道敷の緑化について 鉄道敷の緑化について

飯島教授
都市の暑熱環境の改善に向けて緑化のシステムとしてご紹介頂きました。熱の挙動に関する問題は様々なものがありますが、人工排熱等への対策のみならず、輻射面となる土地の被覆を改善することが重要ではないでしょうか。では続いて汚染物質についてお願いします。

雨水管理ができ、蓄熱も解消し、汚染物質も吸着するという3つの役割

堀川研究員
前職の熊谷組にいる時に「土壌汚染対策法」という法律が成立し、汚染物質対策の件数が大きく増加しました。土木工学的に封じ込める、物理的に移動する方法ではなく、汚染物質を吸着する野草を植えて浄化する方法「ファイトレメディエーション」で、時間をかけてでもそのままの状態で浄化することはできないだろうかと、涌井先生のご指導のもとで研究を進めています。学内での基礎研究によって、いくつかの植物が鉛を吸収すると立証できたので、続いて川崎の工場で実証実験を推進しています。現在は根が2mになるアカザという植物を使っていますが、多肉植物でも鉛の吸着はできるし、湿性植物もそれなりに吸着してくれます。またランドスケープとしては、湿性植物によるレインガーデンであれば雨水管理もでき、地面の蓄熱も解消し、汚染物質も吸着するという3つの役割を見込めるのではないかと考え、さらに川崎市と連携研究を目指しています。

ファイトレメディエーション

ファイトレメディエーション
 

自然を守り、都市生活と共生する道筋を模索

飯島教授
都内の稀有な自然である等々力渓谷の保全再生を目指して、分析化学という専門分野を最大限に発揮しながら研究なさっている吉田先生からもお話をいただければと思います。

吉田教授
等々力渓谷は、東京の南にある緑地です。小さな川があり、夏でも周辺と比べて2〜3度ほど気温が低い。あるきっかけから自治体、市民のみなさんと一緒に保全活動に関わることになりました。分析化学が専門ですので、いろいろ測ってみましたが重金属など危険なものはなく、キレイさという意味では多摩川本流と同じくらいという結果でした。ただし住宅地の雨水が流れ込むので、日によって水量が全く異なります。よどんでしまうと本当に臭くて近寄れないし、台風がくると水があふれて周りに被害を及ぼします。地元の方もキレイにしたいと仰いますが、山の中の川とは違い、雨水を流すという役割があるので、こうした都市の中の河川をどう守っていくか、様々な視座から知恵を出せればおもしろいのではと思っています。これについては先月、学生たちと一緒に福田先生が調査しているので、バトンタッチしたいと思います。

吉田真史

吉田教授

多摩川の自然が「自然に」戻ってくる渓谷になる可能性はある

福田教授
私は生物が専門なのですが、環境指標生物がどれだけいるかということで、その環境を評価できます。たとえば1級のサワガニは等々力渓谷にいます。しかし等々力渓谷から多摩川に行くと出てこなくなる。こうした生物学的な指標で見ると等々力渓谷は結構環境が良いという判断ができます。果たして等々力渓谷だけにいるのかと調べてみますと、同じ世田谷区では成城3丁目の公園にある国分寺崖線の湧き水の出口近くにサワガニがいます。東京の中でもポツポツと局所的に、そうした環境が残っているのですが、お互い交流できないため、今後は血が濃くなって絶滅すると考えられます。点在する自然環境を連続的にすることで自然が活躍できるのですが、現在はそういう状態ではありません。多摩川から等々力渓谷に上る箇所はコンクリートで固められているので、多摩川の自然は戻ってこないと思われますが、もし東京都などが本気で取り組むのであれば、多摩川の自然が「自然に」戻ってくる渓谷になる可能性はあると考えています。

福田達哉

福田教授

またファイトレメディエーションにも興味があり、かつて生野鉱山に生育する植物とそうでない植物を比較したところ、シダ植物の根に共生する菌が変わってくるということがわかりました。そこで、根の菌共生を変えることで効果的なファイトレメディエーションができるのでは思いました。答えは意外と、土の中の菌にあるのかもしれません。

飯島教授
本来の自然を守るという方向性と人の生業とどのように調和させるかは、すぐに答えの出る問題ではありませんが、そこをクリアしないと未来はないと考えるべきなのかもしれませんね。

第三回に続きます。
第一回はこちらをご覧ください。

飯島 健太郎(イイジマ ケンタロウ)

所属:総合研究所 環境学部
職名:教授
出身大学院:東京農業大学 修士 (農学研究科) 1994年 修了、東京農業大学 博士 (農学研究科) 1997年 修了
出身学校:東京農業大学 (農学部) 1992年 卒業
取得学位:博士(農学) 東京農業大学1997年
研究分野:環境緑地学、造園学、公衆衛生学
キーワード:都市緑化、グリーンインフラ

横田 樹広(ヨコタ シゲヒロ)

所属:環境学部 環境創生学科
職名:准教授
出身大学院:東京大学 修士 (農学生命科学研究科) 2001年 修了、東京大学 博士 (農学生命科学研究科) 2009年 修了
出身学校:東京大学 (農学部) 1999年 卒業
取得学位:博士(農学) 東京大学 2009年
研究分野:都市生態学、ランドスケープ・エコロジー、緑地計画
キーワード:ランドスケープ計画、ランドスケープ・エコロジー

Rijal H.B.(リジャルH.B.)

所属:環境学部 環境創生学科
職名:教授
出身大学院:京都大学 環境地球工学専攻 修士 2000年 修了、京都大学 環境地球工学専攻 博士 2004年 修了
出身大学:芝浦工業大学 建築工学科 1998年 卒業
取得学位:博士(工学) 京都大学 2004年
研究分野:建築環境、都市環境
キーワード:熱的快適性、環境調整行動

吉田 真史(ヨシダ マサフミ)

所属:知識工学部 自然科学科
職名:教授
出身大学院:東京大学 修士 (総合文化研究科) 1989年 修了、東京大学 博士 (総合文化研究科) 1992年 単位取得退学
出身学校:東京大学 (教養学部) 1987年 卒業
取得学位:博士(学術) 東京大学 1994年
研究分野:分析化学、天然物化学、生物物理学、計算化学
キーワード:水質分析、土壌分析、機器分析、計算機シミュレーション

福田 達哉(フクダ タツヤ)

所属:知識工学部 自然科学科
職名:教授
出身大学院:東北大学 修士 (理学研究科) 1997年 修了、東北大学 博士 (理学研究科) 2003年修了
出身学校:東北大学 (理学部) 1995年 卒業
取得学位:博士(理学) 東北大学 2003年
研究分野:生態学、遺伝学、分類学
キーワード:生物多様性、環境適応

堀川 朗彦(ホリカワ アキヒコ)

所属(職名):総合研究所(客員研究員)
委員会等:三鷹市景観審議会(委員)
資格:技術士(都市及び地方計画)、登録ランドスケープアーキテクト、一級土木施工管理技士
研究分野:造園学、都市計画
キーワード:ランドスケープ、景観・都市デザイン、住民参加まちづくり

山﨑 正代(ヤマサキ マサヨ)

所属(職名):総合研究所(客員研究員)
委員会等:JLAU(一般社団法人 ランドスケープアーキテクト連盟)理事
資格:技術士(都市及び地方計画)、登録ランドスケープアークテクト、一級建築士
研究分野:造園学、都市計画
キーワード:ランドスケープ、景観・都市デザイン、住民参加まちづくり

ライター:未来都市編集部

東京都市大学 総合研究所 未来都市編集部です。未来の都市やまちづくりに興味・関心を持つ方に向けて、鋭意取材中!