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インフラ領域における3年間「まだ解明しきれていない、津波発生のメカニズムを追う」

未来都市編集部745 views

3年強にわたる、インフラ領域の取り組み成果をご紹介する第2回。今回登場いただく三上貴仁 建築都市デザイン学部 准教授は、都市のインフラを危機にさらす沿岸部の災害について研究しています。三上准教授は、いまだ全容が解明されていない津波発生のメカニズムを、世界各地でのフィールドワークによる解明を目指しており、成果を都市のリスク管理に役立てたいと考えています。
(取材は、2020年2月26日に実施しました。)

第1回の記事はこちらです。

シミュレーションの想定を超える津波

私が取り組んできたのは、津波や高潮など、沿岸に発生する災害メカニズムの解明です。この20年ほどの間に、スマトラ島沖地震(2004年、インドネシア)、ハリケーン・カトリーナ(2005年、アメリカ)、チリ地震 (2010年、チリ)、東日本大震災(2011年、日本)など、さまざまな災害がありました。ただ、一つの国や地域に限定して注目すると、大きな災害は何十年~何万年に1回という頻度です。そこで、知識を蓄積するため、世界に広がる研究者ネットワークで知見を共有し、各地域で被害の実態を調査しています。

三上貴仁准教授

2018年のスラウェシ島地震(インドネシア)では、特殊な津波が発生しました。通常、地震に起因する津波は、海底の断層が上下に動いたことで海面に段差が生じ、これが最初のエネルギー源となって発生します。しかし、スラウェシ島地震は断層が横に動くタイプの地震だったため、大きな津波は起こらないと考えられました。

ところが、現地の被災者が動画共有サイトにアップした動画などを見ると、家が流されるといった甚大な被害が報告されていたのです。シミュレーション上では、最大1mほどの津波にとどまるはずの地域でした。また、津波の大きさに比べて、波が到達したのは沿岸から200m~300mまでと短かい距離だったことも特徴でした。これは、津波の周期が短いことを意味します。ほとんどの場合において大きな津波ほど周期が長くなるため、これも特殊なケースと言えるでしょう。どういったメカニズムで発生したのか、きちんと調査する必要があると考えました。

現地調査で見えてきた、“地すべり”による津波

2019年夏には、現地であるインドネシアを含む複数の国の研究者によるチームで、被災地調査が行われました。本調査の目的は、実際にどの程度の津波が発生したのか、詳細なデータを集めることでした。被災者がアップした動画から、被害が大きかったと想定された地域を中心に、フィールドワークで津波の痕跡を探しました。
痕跡とは、例えば、山肌の植生の境界線が挙げられます。海水をかぶった植物は枯れてしまうため、そこまで津波が押し寄せたことがわかるからです。そういった地道な調査の結果、ところによっては津波が5mほどの高さまで達したことが明らかになりました。

三上貴仁准教授

そうやって情報を集めているときにちょうど、地震発生時に空港を離陸したパイロットから話を聞くことができました。その証言からわかったのは地震発生時、海に小さな波がたくさん発生していたということでした。これにより私たちは、海底で大規模な地すべりが起きた可能性が高いと考えました。この地域は海岸近くに石切り場があり、砂利が河口から海にかけて堆積しており、しっかりした海底地盤ではありません。この影響で、一般的なものとは異なるメカニズムで津波が発生したのではないでしょうか。

その都市に起こりうる災害と、そのリスクを周知していく

このように、津波は地震だけでなく、さまざまな要因で発生します。2018年12月末にジャワ島やスマトラ島付近を襲った津波は、地震起因ではなく、火山活動による山体崩壊によるものではないかと考えられています。両島の間にあるスンダ海峡には海底火山があり、それが噴火して山体が広範囲に吹き飛ばされたことによって局地的に10mを超える津波が発生したことが現地調査でわかっています。
このような、火山活動による山体崩壊が引き起こした津波は日本にも事例があり、1792年の「島原大変越後迷惑」が挙げられます。長崎・雲仙普賢岳の隣にある山が火山活動に伴う地震によって大きく崩れたことで、大きな津波が押し寄せたというものです。現在も、その山が馬てい状に崩れていることが見て取れます。

フィールドワークや史実の調査などを通じても、実際に津波がどのように押し寄せるのか、どのぐらいの規模になるのかなど、すべてを説明するのは難しいことです。少なくとも海底の地盤を綿密に計測する必要がありますし、災害後にデータを取っても、それ以前のデータと比較できないため、わからないことがたくさんあるからです。しかし、災害が起こる可能性や、リスクについては、ある程度説明できるようになりました。それらを整理して伝えていくのが重要ではないかと考えています。今後も、都市のインフラにイレギュラーで甚大な被害を与える災害に対して、どのようなメカニズムで発生し、どのような備えが必要なのかを追究していきます。

三上 貴仁(ミカミ タカヒト)

所属:建築都市デザイン学部 都市工学科
職名:准教授
出身大学院:早稲田大学 修士 (創造理工学研究科) 2011年 修了、早稲田大学 博士 (創造理工学研究科) 2014年 修了
出身学校:早稲田大学 (理工学部) 2010年 卒業
取得学位:博士(工学) 早稲田大学 2014年
研究分野:自然災害科学、水工水理学、海岸工学、自然災害、防災・減災

ライター:未来都市編集部

東京都市大学 総合研究所 未来都市編集部です。未来の都市やまちづくりに興味・関心を持つ方に向けて、鋭意取材中!