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未来都市と地域を活かした集客学

未来都市編集部356 views
第24回研究発表全国大会

日本広報学会は2018年10月27日~28日、東京都市大学・等々力キャンパス(世田谷区)にて「第24回研究発表全国大会」を開催した。多彩な研究発表プログラムのうち、2つのパネルディスカッションに焦点を当て、東京都市大学から参加した教授陣による研究報告の内容についてレポートする。

第24回研究発表全国大会

初日に行われたパネルディスカッションのテーマは、「未来都市とコミュニケーション 地域の調和を実現する企業・行政・市民・メディアの役割」。東京都市大学都市生活学部・永江総宣教授がコーディネーターを務め、前半は各パネリストによる活躍分野に関する研究報告、後半には研究報告を踏まえたパネルディスカッションが行われた。

ここでは、前半の研究報告について取り上げる。東京都市大学未来都市研究機構・元機構長、都市生活学部長・教授の川口和英氏は、「未来都市と地域を活かした集客学」をテーマに、「集客学」についての活動内容を報告した。

川口和英教授

未来都市の創生に「集客学」を活かす

東京都市大学未来都市研究機構では、他国に先行して進む日本のエイジングシティ問題について、“衰え”だけに注目するのではなく、都市が魅力を増し成熟する機会と捉えて、あらゆる視点から都市研究を進めている。

魅力ある未来都市を目指す手段のひとつに「集客」が挙げられる。「人を惹きつける空間や仕掛けは、どのように企画・計画され、どのように創られるのか」。集客の仕組みを考えれば、「都市とは何か」に対するヒントが得られるはずだ。また人を集めることをテーマに都市的空間をデザインできれば、少子高齢化が進む日本でも活気に満ちた成熟都市を育成できるだろう。

川口和英教授

この集客の活用を総合的に検討しているのが、「日本集客学会」の創設とその応用だ。川口氏が常任理事を務める「日本集客学会」(2014年1月発足)は、「ひと、あつまる、つなぐ」をコンセプトに、人を集めるための研究を通じて新しい時代を目指している。主たるミッションは、「集客資源、集客技術、集客施設、集客マネジメントなど集客に関する学術的研究とその交流連携を促進し、学術・文化・科学技術の発展に貢献する」ことだ。本学会ではこれらの活動を通じて、学問としての「集客学」を構築することを志しており、いままでの学会のような敷居の高い学者、研究者だけのためのものではなく、今後ゲリラ的に進めていく。

この「集客学」を都市づくりに活かすには、集客空間を実際に考察して、都市をデザインしていくための基礎を考える必要がある。つまり、文化、芸術、観光、企業、地域経済、メディア、デザイン・イメージほか感性を刺激する要素などについて、科学的に分析し、知見を蓄積していくことが求められる。人が集まり賑わいをもたらす仕組みを、都市に応用する手法が確立されれば、日本の都市の未来は明るい。

人の集まる機能から集客の論理を考える

人は集まることに対して、本能的に安心感や心地よさを抱くものだ。その場所に集まる理由は、賑わいが好きだから、好奇心で、野次馬根性がはたらいて…などさまざまだが、人の集まる機能として考えられる代表的なものは次の7つである。

  1. 信仰宗教政治パワー
  2. ターミナル機能
  3. アミューズメント(おもしろいもの)機能・学べる機能
  4. 水辺の空間
  5. 非日常空間(リゾート地)
  6. 自然の魅力
  7. その他(歴史的遺産ほか、歩けるまちの再生、緑の再生など)

この中からいくつか集客空間として成功している事例を紹介しよう。

ケース1.信仰宗教政治パワーに人が集まる(1)

教会・モスク・メッカ・寺社など、信仰は人を集める力を持つ。バチカン市国の「サンピエトロ寺院・サンピエトロ広場」、マカオの「セントポール寺院」、イスラエルの「嘆きの壁」などには、世界中からたくさんの人が集まる。日本でも京都の「伏見稲荷大社」は「外国人に人気の日本全国・観光スポット」ランキングで2013年から5年連続1位を獲得している。神や政治的なもの、エネルギーの中心地には磁力があるのだ。

伏見稲荷神社

伏見稲荷神社

“神々の島”といわれる海域リゾート、バリ島(インドネシア)も人を惹きつける場所だ。インドネシアの多くはイスラム教だが、海で遮られているため独自のヒンズー文化が守られている。さらにヌサドゥア地区は、建物の高さをコントロールするなど厳しい規制を設けることで、魅力を高めるのに成功している。コストはかかるが、厳しい環境が却って魅力を増加させるのだ。バリ島は、信仰パワー、水辺の空間、非日常空間、自然の魅力など、複数の人を集める機能を備えている。

ケース2.ターミナル機能に人が集まる(2)

赤レンガ造りの「東京駅丸の内駅舎」は、人々が集う東京の顔のひとつである。素晴らしいデザインを生み出したことで、丸の内に人がたくさん集まるようになった。これは空中権を売って資金調達を叶え、復元工事を成功させることができた良い事例だ。また渋谷駅の「渋谷スクランブル交差点」も、外国人観光客を魅了し続ける必須の観光スポットである。

東京駅

東京駅

京都の嵐山駅にも注目したい。「キモノ・フォレスト」と題し京友禅をアクリルで包んだ600本ものポールを駅の至る所に設置し、武骨な鉄骨でできた柱などを竹で覆うことで、訪れる人におもてなしの空間を提供している。

嵐山駅

嵐山駅

ケース3.水辺の空間に人が集まる(4)

イタリアのベネチアは、“水の都”として有名な観光地だ。新しく生まれ変わったニューヨークの「ピア17」や「バッテリー・パーク・シティ」も、水辺の素晴らしいロケーションで人を惹きつけている。日本でも、北海道「小樽運河」や沖縄「美ら海水族館」、兵庫「天保山ハーバービレッジ」、福岡「キャナルシティ博多」など、水辺の環境や水をつかった装置に人が集まっている。

ベネチア

ベネチア

ピア17

ピア17

以上のような成功事例を基に、どのようなものに人は惹きつけられるのか、その源となるものは何かを考え調査分析していけば、魅力ある未来都市の形が見えてくるだろう。未来都市の形を描ければ、その実現に向けて企業・行政・市民・メディアの役割もおのずと見えてくるはずだ。集客学の構築は、今後の広告や広報の世界にも通じるものであると考える。

川口 和英(カワグチ カズヒデ)

所属:都市生活学部 都市生活学科 大学院環境情報学研究科
職名:教授
出身大学院:早稲田大学大学院 修士 (理工学研究科建設工学専攻) 1986年 修了
出身学校:早稲田大学 (理工学部) 1984年 卒業
取得学位:博士(工学) 早稲田大学大学院 2001年
研究分野:都市計画・建築計画

ライター:未来都市編集部

東京都市大学 総合研究所 未来都市編集部です。未来の都市やまちづくりに興味・関心を持つ方に向けて、鋭意取材中!