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UDXは都市のマネジメントに、どのような解決を提供しうるのか?(後編)

未来都市 編集部2,026 views

本記事では、前編に続いて「都市マネジメント研究ユニット」においてユニット長を務める都市生活学部の北見幸一准教授、都市生活学部教授の沖浦文彦教授を中心に、協業しているベンチャー企業、株式会社Liquitous(リキタス)の栗本拓幸氏、琴浦将貴氏、栗栖翔竜氏に、都市マネジメント研究ユニットの展開についてお話をうかがいました。(前編の記事はこちらです)

住民が意見を言いやすい自治体には、地域ブランドを醸成する土壌がある

座談会の様子

北見准教授:ツールをつくって終わりでなくて、意見が言いやすい風土をつくるのも、一方では大事なポイントかもしれません。

沖浦教授:結局、道具を使って何をしたいかという当事者の意思ですね。まちづくりに意欲的な自治体はさまざまな手段を探していて、われわれの街ならばこういう部分で受け入れられるのでは、という突破口に気づいています。当事者にはシナリオが見えていて、それをどんどんブラッシュアップさせていく土壌があるのです。言い換えれば、住民と行政の信頼関係です。もちろん、醸成するには年単位の長いスパンが必要です。取り組む意欲の有無で、今後は自治体の優勝劣敗が明確になってくるでしょう。

北見准教授:自治体内で発言しやすいですとか、デジタル化による住み心地のよさが地域の土壌となり、高い満足度につながるのではないでしょうか。マーケティングやプロモーションの視点からも、自分たちの街らしさをみんなで話し合えることは素晴らしいことです。意見を言ったり、議論したりすることが地域の愛着を生み、「地域ブランド」へとつながっていく第一歩になります。

住民も当事者として活躍する。そのためのデジタル活用が鍵になる。

栗本氏

リキタス栗本CEO:私たちは、地域住民、場合によっては関係人口とされる方々の参加の取り組みを行う必要性がかなり高まっているのではないかと考えています。少子高齢化や税収減など構造的問題が山積するなか、これからの自治体のガバナンスを今までの延長線上にはない形に変革する。それが欠かせないと思います。

今までの市民の皆さんと行政の関係性ですと、住民の皆さんが置き去りになってしまう可能性が少なくありません。一方で行政の側からすると、住民の皆さんにも行政の意義を理解してもらいたい。場合によっては共感を得ながら取り組みを進めなければなりません。これからのまちづくりのコンセプトは、満足をしてもらう以上の、市民の皆さんの「共感」です。そして、共感に基づくまちづくりへの参加を生み出せることが欠かせません。

沖浦教授:参加するという言葉の捉え方は難しいですね。誰かがお膳立てしたものに加わることも参加です。自身が当事者となって何かを始めようとする参加の形もあります。これからは、政府や自治体のあり方が変わらなければ、維持できなくなると言えます。住民も当事者として、いっしょに街をつくる行政。行政職員がリーダーではなく、ファシリテーターになるということです。
市町村は住民の集合体ですから、役所が全部リソース配分して、やることを決めるのはおかしな話であり、無理があります。当事者が当事者としてもっと活躍する。そうすることによって満足度が高まるし、中央集権的なプランから離れて、部署や地域のアイデアをうまくつなぎ、重複を回避して、アイデアが1+1=3になるような創発性が発揮できるようになります。この時、参加にあたっては、個別性が強く、取引コストの低いデジタルの特性が生きてきます。テクノロジーの進化は、新しいものを生み出す鍵になるのです。

沖浦教授

人とまちの調査を通してデータを収集。社会を変える研究は終わらない。

沖浦教授:研究ユニットが行ってきた、都市マネジメント手法の開発は、これからも続く、終わりがない研究です。日本の地域における行政の役割・位置付け、住民との関係は、社会の状況の変化に伴って課題が次々と出てきます。エンジニアリング的な完成はないと言ってもいいでしょう。

北見准教授:私自身の研究テーマとして、シティプロモーションや地域ブランドなど、マーケティングや広報・PRと関連した領域を扱っています。プロモーションという響きから、ただ単に外部に情報発信すればよいと思われがちですが、地域内部(インターナル)の当事者である「住民」の意識転換や行動変容が極めて重要になります。住民の満足度や地域参画度が低ければ、自分から自分たちの地域のことを外部の人に薦めようとはしません。地域の担い手として、まさに当事者が当事者としてもっと活躍してもらうための仕組みづくりがシティプロモーションです。
「スマートシティ」「スーパーシティ」「デジタル田園都市国家構想」などが注目されていますが、デジタルを使えば何でもいいということではなく、本質は同じだと思います。

北見准教授

リキタス栗本CEO:キャッチーな取り組みは、今までも日本の自治体でいくつかありました。しかし、打ち上げ花火のように上げて、数年経ったら忘れ去られてしまうことが非常に多いのです。私たちは一時しのぎの活動をしたいわけではありません。テクノロジーを駆使して、これからの社会に根づいていく新しい市民参加の仕組みをつくりたいという想いがあります。継続的に、未来へ向けて、しっかりと社会に実装していくために必要なことを積み上げていく。その第一歩が今回の共同調査であると理解いただければ幸いです。

北見 幸一(キタミ コウイチ)

所属:都市生活学部 都市生活学科
職名:准教授
出身大学院:立教大学 博士 (経済学研究科) 2009年 修了
取得学位:博士(経営学) 立教大学 2009年
研究分野:経営学
キーワード:マーケティング、ブランド戦略、広報戦略

沖浦 文彦(オキウラ フミヒコ)

所属:都市生活学部 都市生活学科
職名:教授
出身大学院:大阪大学工学研究科環境工学専攻修士 1991年 修了、法政大学社会科学研究科経済学専攻修士 1998年 修了、千葉工業大学社会システム科学研究科マネジメント工学専攻博士2018年 修了
取得学位:博士(工学) 千葉工業大学 2018年
研究分野:マネジメント、国際協力、人材育成
キーワード:プログラムマネジメント

栗本 拓幸(クリモト ヒロユキ)

株式会社Liquitous CEO

琴浦 将貴(コトウラ マサキ)

株式会社Liquitous Researcher / CTO

栗栖 翔竜(クリス ショウタ)

株式会社Liquitous Researcher / Communicator

ライター:未来都市 編集部

東京都市大学 総合研究所 未来都市編集部です。未来の都市やまちづくりに興味・関心を持つ方に向けて、鋭意取材中!