MENU
MENU

鉄道線路の緑化で熱環境問題を解決し、緑を利用した土壌汚染物質浄化の実証実験へ

未来都市編集部107 views

都市環境を改善するためには、都市空間の中に適正な緑地を配置する計画が重要です。横浜・川崎の臨海エリアの土壌汚染に対して緑を使った浄化実験に取り組み、主に環境緑地学について研究している総合研究所の飯島健太郎教授にお話を伺いました。

「災害や異常気象による被害の抑制・改善に役立つ切り札、グリーンインフラ」

東京都市大のグリーンインフラユニットは、「環境改善・防災減災・人の健康」という大きな柱を立てて検証をし、その検証結果をもとに社会化をさせるという将来を見据えて研究を行っています。

最近問題が深刻化している災害や異常気象による被害を抑制・改善するためには、適正な緑地の配置計画が重要です。緑地がうまく配置されることによって、災害時には避難場所として使うことができ、火災の延焼を食い止めることも役立ち、人を逃がす時間を確保することにつながります。また災害時でなくても、緑地が温暖化を抑止したり、降った雨が土地に浸透することで水害を減少させたりと、日常的にも役立つのです。人々が日常的に外出したくなるのも、緑地や緑道が多くある場所ですよね。そういった総合的な視点からうまく土地を利用するための切り札が緑地であり、グリーンインフラだと思っています。

飯島健太郎教授

「蓄熱体にもなる建物の緑化が、ヒートアイランド現象緩和につながる」

特に近年問題になっている都市の温暖化ですが、建物は蓄熱体にもなっています。酷暑期には表面温度は60度にも上り、また放射熱が大気に影響して積乱雲が作られます。それらを抑えるためには、放射熱環境の改善が不可欠です。アスファルトに木陰を作り、建物を緑化すると、表面温度は20度以上低下します。緑化は都市のヒートアイランド現象を緩和する重要なグリーンインフラなんです。

そこで私たちが新たに提案したいのが線路緑化です。線路は帯状に長いという特徴を持っているので風の道にもなり、有効に冷却作用が働き気象条件を調整する機能をもたらしてくれます。私たちと共同研究している東京都交通局が求めているのは、線路を帯状に緑化することで地域の熱環境を改善できるのではということです。鉄道敷の緑化はグリーンインフラのこれからの切り札になるだろうと思っています。

飯島健太郎教授

「有効な土地利用転換をどう果たしていくのかが重要ですね」

野草を用いたブラウンフィールドにおける浄化機能の検証、ファイトメディエーションもグリーンインフラだと思っています。我々は横浜・川崎の臨海部周辺でこの実験を行っています。その辺りは鉄工造船などをやってきた大規模な企業が土地を占有していて、工場の生産活動はほとんど海外へ移転しています。この臨海部は、羽田やみなとみらいへ橋一本で繋がる場所です。電気・ガス・水道・鉄道など、全てが揃っている“潜在力が高い場所”ともいえます。再開発をしたいデベロッパーはたくさんいますが、そこにブレーキをかけているのが土壌汚染です。

残念ながら横浜・川崎臨海部は、開発するためには土地の浄化が必要な場面が少なくないと思います。それには莫大な費用がかかり、土地の値段以上になる可能性もあります。汚染が分かった以上は行政へ届けなければならず、土地利用についての報告も必要です。そのため、こういった土地は対策上盛土したり、アスファルトで覆い駐車場にされるのが現状です。

飯島健太郎教授

こうして長期間遊休状態にしてきた土地は、このままでは何十年もその状態のままです。ならばその時間を味方につけて、植物を用いた土壌の浄化を実現できないかという研究を私たちは始めています。汚染は表面にあるわけではありません。表面から1メートルや、1.5 メートルの所に分布しています。そこで私たちが使ったのが“アカザ”という植物です。一年草ですが根が3メートルにも伸びます。よもぎや綿花などの植物を組み合わせた浄化実験を、都市大内の実験ハウスで模擬的な汚染土壌を作って行っています。

ファイトメディエーション

土壌中の鉛は150ppmが環境基準となります。開発には基準以下にする必要があります。そこで実際の基準値と同じ150 ppmの模擬汚染土壌を作り、それよりも濃度の濃い土壌、低い土壌、鉛を含まない土壌を作り、植物を植えて実験したところ、それぞれの濃度に従って植物の体の中に鉛を取り込んでいたんですね。こういった植物を現場に植えて毎年1~2回狩り取って処分をするということを5年10年と繰り返せば、汚染は基準値以下になるかもしれないんです。
これまでの、何億円とお金をかける方法は不要になるかもしれません。植物の生理的な能力で鉛を吸い取り、10年で基準値以下になったのでここを開発します、というストーリーの方が環境にも優しいしコストもかからないでしょう。

海外は植物や微生物などを使って浄化し、再開発をかけて魅力的な都市を作っている場所がいくつもあります。土壌汚染だからダメだと規制して土地の所有者を叩くのではなく、有効な土地利用転換をどういう形で果たすのかが重要になってくると思います。

飯島 健太郎(イイジマ ケンタロウ)

所属:総合研究所 環境学部
職名:教授
取得学位:博士(農学) 東京農業大学1997年
研究分野/キーワード:リスク、防災、健全度評価

ライター:未来都市編集部

東京都市大学 総合研究所 未来都市編集部です。未来の都市やまちづくりに興味・関心を持つ方に向けて、鋭意取材中!