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2020年以降に重要となる都市問題について

未来都市編集部52,911 views

未来都市研究機構では、様々な都市のエイジング問題に対して研究が行われています。
生活領域ユニットの北見准教授らの研究チームでは、実際に都市生活者が自身の街や未来に関して、どのように現状を捉えているのかといった事実を把握するため、全国の約1万人(9,842人)を対象とした大規模都市生活者の意識調査を行いました。
今回は、北見准教授にこの調査を踏まえた未来の都市問題についてお話をお伺いしました。

※2018年10月28日に開催予定の未来都市研究機構セミナー(日本広報学会共催セミナー)に、北見准教授が登壇します。申込方法などに詳細はこちらをご覧ください。

「調査の結果を分析し、都市生活者の隠れたニーズを掴む」

近い将来、高齢化社会・人口減少と共に、都市には様々な問題が発生すると想定されています。我々はこの問題に対していち早く研究に取り組み、都市生活者の生活の質の向上に貢献できるように日々努めています。

今回、我々研究チームでは「2020年以降に重要な社会問題になると思われること」についていくつかの質問を掘り下げ、それを選択肢として提示し、そこから複数回答可で答えていただくという形式で調査を行いました。調査対象は全国男女18歳~69歳、9,842名を有効サンプルとしています。

2020年以降の重要な社会問題になると思われること 2020年以降の重要な社会問題になると思われること

分析の結果、「2020年以降の重要な社会問題になると思われること」として、最も回答が多かったものから順にお話していきましょう。

まず一番が「介護する人も高齢者となる」(66.9%)。
老老介護の問題については半数以上の方が危機感を強く認識していました。

その次に注目して欲しいのが「空き家が増加する」(51.7%)。
これは、2018/3/21付の日経新聞でも「再開発が招く住宅供給過剰」として都市郊外でのタワーマンション乱立を例に取り上げられたばかりです。現在はまだオリンピック前というのもあってタワーマンションの建設は加速中ですが、これから先、人口減時代に入り、住宅の大量供給はいずれ行き詰まりを見せることになるでしょう。タワーマンション乱立の側では、空き家だらけの老朽マンションが増え続けることも予想されています。

都市問題というと大都市周辺の問題と捉えがちですが、これは地方都市の問題でもあります。
特に、この空き家の増加については秋田県・山形県・群馬県などをはじめ、地方都市の人々の方が問題意識を強く持っていることがわかりました。

北見幸一准教授

続いては「孤立死(孤独死)が増加する」(44.0%)、「団地の住民が高齢化する」(41.3%)、「高速道路や橋などのインフラが老朽化する」(40.9%)、「上下水道・ガスなどのライフラインが老朽化する」(38.6%)という回答が出ました。

このように、高齢化に関する社会問題と同時に、社会インフラの老朽化問題が回答の上位に入っています。ようやく都市生活者にもインフラ対策の重要性が認識されてきたということが、この調査でも明らかになったわけです。

「研究の成果は全国、そして世界に向けて」

当研究機構において、高齢化問題と社会インフラの老朽化について研究を行うインフラユニットがすでに立ち上がっています。研究成果は、全国の皆さまのニーズに応え、必ずお役に立てるはずであると確信しています。

未来都市研究機構というと、「東京など大都会だけで執り行われているもの」と思われがちですが、地方都市についてもきちんと我々の技術が行き渡るようにしていくべきであり、このように全国規模でしっかりとした調査を行い研究開発を進めています。都市問題は、地方都市の特性により、その深刻度が違ってくることを知るべきなのです。

北見幸一准教授

調査結果を都道府県別にクロス分析し、全国平均よりも大幅に回答を集めている項目を例にあげてみます。

青森県「近くに商店がなくなり、買い物難民になる」(36.7% /全国平均20.6%)。
秋田県「まちが空洞化し、地域の活力が低下する」(47.3%/全国平均23.0%)。
山梨県「上下水道・ガスなどのライフラインが老朽化する」(54.0% /全国平均38.6%)。
和歌山県「社会関係(会話・近所づきあい)が希薄になる」(39.7%/全国平均28.4%)。
鳥取県「老人ホームに入居できなくなる」(48.8% /全国平均35.1%)。

このように、地方都市はそれぞれに違う問題を抱えています。
都市問題というのは一概に片づけることはできず、まず「どの問題から対処すべきか」といった優先順を検討するところから始める必要があるのです。

北見幸一准教授

我々は現在、インフラ・環境・情報・生活・健康という5つの領域で研究ユニットを立ち上げ、エイジングシティー問題に取り組んでいますが、それぞれ多様化するニーズに応じて、当初の5つの領域に加えて、さらに必要に応じて適宜研究ユニットを増設していく予定です。我々は研究者のための研究ではなく、都市生活者のために研究を続け、そして生活の質の向上を東京圏から発信し、日本全国へ広め、さらには世界のエイジングシティーに向けて貢献していくことを目指しています。

北見 幸一(キタミ コウイチ)

所属:都市生活学部 都市生活学科
職名:准教授
出身大学院:立教大学 博士 (経済学研究科) 2009年 修了
取得学位:博士(経営学) 立教大学 2009年
研究分野:経営学
研究分野/キーワード:経営学、 マーケティング、ブランド戦略、広報戦略

ライター:未来都市編集部

東京都市大学 総合研究所 未来都市編集部です。未来の都市やまちづくりに興味・関心を持つ方に向けて、鋭意取材中!